あらゆる物事・芸術品において「中立・雑食」の
スタンスを取っている僕は、
たとえば食べ物にしても特に好き嫌いをせずに食べるし、
映画もハリウッド系、ミニシアター系を問わず、平等に接する。
つまりできる限り、物事に「壁」を作らずに接している
とりあえずは接してみた上で取捨選択するわけで、
はじめから先入観を持って切り捨ててしまうのは、あんまりよくない
(「人間」の好き嫌いだけは恐ろしく偏っているが)。
もう少し下世話な話で言えば、
僕はどんなアダルトビデオであれ一度は「挑戦」する。
ただ、どれだけ雑食をモットーにしても、
ゲロと獣姦ものと血液系SMはダメだった。
ふだん人を刺す漫画ばかり描いているけれど僕は本物の血液が苦手なのだ。
そのスタンス――中立性・雑食性――は、
音楽においても同じように発揮される。
僕の音楽遍歴は幅広く、
ロックに始まりジャズ、ヒップホップ、R&B、トランス、ハウス、テクノ、
クラシック、ヒーリング・ミュージック、メタル、ハードロック、
ファンク、フリーソウル、レア・グルーヴ、ドラムンベース、
マイルス・デイヴィスからアレステッド・ディヴェロップメント、
果てはミヒマルGTからアニメソングまで何でも聴いた。
だけど。
やはり遺伝子に組み込まれた「好きな音」がある。
僕にもひいきのアーティストというものがいる。
以前ガロの漫画を読んでくれていた方から、
「田中さんがヒップホップの話をするなんて驚きました」と
メールを頂いたことがある。
「ダボダボの服に金のネックレス」という、
ステレオタイプなBボーイ・ファッションが、
僕の漫画の作風とあまりにもミスマッチなので驚いたのだろうけれど、
それは前述したとおり僕の「雑食性」が成せるワザだ。
たとえば2パックやnotorious B.I.Gやエミネムらの、
ギャングスタ・ラップが持つマッチョイズムは
僕の感性にそぐわない部分もあるけれど、
別にそういったファッション自体には興味がなくって、
ただ僕は音楽としてヒップホップを楽しんでいるだけなのだ。
それに、ヒップホップ・アーティストのすべてが、
金ネックレスでマッチョで外車にAクラスクイーンをはべらせて
ワイン飲んでマリファナ吸ってホーミーとレイドバックで
ダウンタウンをハングアラウンド…、
ってわけじゃない。
デラソウルやトライブを挙げるまでもなく、
もっと「メガネ」を感じる曲だってたくさんある。
メガネ…、まあ知性ってことだ。
で、今回は知性を感じるヒップホップ最右翼を紹介。
今までラップ/ヒップホップを本当にたくさん聴いてきて、
つまらないもの、すばらしいものにたくさん出会ったけれど、
そういった「好き嫌い」を超える曲に出会うことがある。
そういう曲に出会った瞬間は、
まるで「死ぬほど好みの女性から、愛の告白をされた」ような、
そんな夢心地な気分になる。
もちろん僕と彼女は結婚することになる。
それは奇跡に近い。
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最愛の妻を紹介しよう。
"Pase Rock / The Old Light"だ。
前にこのブログで紹介したNujabes絡みなのだが、
ジャズの空気を感じるヒップホップに、どうも僕の耳は弱いらしい。
はじめにこの曲の存在を知ったのは渋谷のジャズDJ須永辰緒氏が作った
「World Standard」というミックステープだったが、
テープを聴き終わった直後にレコード・ショップに向かい、
一心不乱でこの曲を探しまくり、
見つからなかったために家に帰りネットをサーフして掲示板に書き込みさえした。
めんどうくさがりの僕がそこまでアクティヴになれることなんて、
彼女と仕事のこと以外にはめったにない。
努力の甲斐あってか、僕のiPodにはめでたくこの曲が入っている。
衝撃的なピアノ・イントロから始まる、めくるめく4分間。
こういう表現は陳腐かもしれないけど、
「敷き詰められた薔薇のベッドに埋もれてセックスするような」感じ。
iPod片手に布団にもぐりこみ、明かりを消して耳を澄ませ、
この曲に何度心を震わせたのだろうか?
今までに何百回と聴いたのだがいまだに暇さえあれば聴いている。
この曲は間違いなく僕の「ヒップホップ版・心のベストテン第一位」で、
今後も揺らぐことは絶対にない。
ぜひ聴いてみてください。